ご案内
相場の動向や、経済、金利、政局の見通しなどに気を配ることはしないし、ましてやそれで生計を立てている人々に無駄金を払うことはない。
事実と財務状況を調べ、企業の将来性を評価して、すべてが気に入ったら買えばよい。
多くの人の投資法を見ていると、ろくに手のなかのカードを見もしないで一晩中ポーカーをしているのも同然なのだ。
Gを二ドルで買う、あるいはWやZが安値に落ち込んでいたときに買う、というような知識と勇気を持っていた投資家はそういなかっただろう。
多くの専門家が、それら企業が抱える深刻な問題点を指摘したための下げだったからだ。
ところがPがそういうときに買った株は、みな長期間にわたって強い収益力を示し続けていて、他を圧する営業基盤を持ち、巧みに経営がなされている企業のものである。
彼は年次報告書によって、自社の株主ばかりでなく、広く一般の投資家の向上に寄与していると言える。
彼は、父方と母方の双方から新聞編集者の血を受け継いでおり、叔母のAはパブリックスクールで三O年以上も教師を務めた。
そのせいか、彼自身も、ビジネス一般、とくに投資について、書いたり教えたりすることを楽しんでやっている。
オマハのネプラスカ大学の学生であった一二歳のときには、ボランティアで教師をした経験があり、ニューヨークで働いていた際には、スカースデール高校の成人教育コースで株式市場について講義をした。
また一九六0年代から七0年代にかけての一0年間は、クレイトン大学で無料の講座を持っていたし、一九七七年には、A座長の、SEC(米証券取引委員会に対する企業内容の開示についての諮問委員会に参加している。
この委員会以降、Pの年次報告書の内容に劇的とも言える変化が生じている。
一九七七年末から七八年初めにかげて書かれた、七七年度のものからである。
その構成は、彼が一九五六年から六九年まで作成していた、パートナーへの報告書に近いものになっている。
一九八0年代の初め頃から、Pの年次報告書は、保有株の状況と新規の投資、保険・再保険業務の現況報告などで構成されるようになっている。
それに一九八二年度分からは、Pが投資対象とする企業、業種の選定基準を記している。
豊富な実例、比喰に加えて、示唆に富んだストーリーを盛り込んで、株式投資に際してなすべきこと、しではならないことを示している。
彼はPの長期展望について、高度の基準を設定してきた。
それは実態価値の年率一五%の成長である。
この水準を達成した企業はそれまでほとんどなかったし、一九五六年−九三年の期間をとれば、皆無だった。
資産が大幅に増加した段階になると、この目標基準の維持が容易でないことは彼も認めている。
それでもチャンスはいつもあったし、Pでは、いつも現金部分を潤沢にしていて、それに対応することができたので、毎年の成長が続いている。
一九九三年六月に出た年次報告書の六0ページ目にある。
一九六七年以来、当社では現金配当を一度もしていない。
という言葉は、彼が持つ自信のほどを示しているように思われる。
投資についての本を書くというのが年来の望みだ、と彼は述べている。
その日が来るのが待たれるが、それ以前に、彼の年次報告書がその埋め合わせになっている。
RはPの歩みをたどり、彼の投資術、投資法について述べ、加えて、その過程で彼が出会った人々について語っている。
さらに本書中には、他に類を見ない成果を上げたPによる数々の投資実績の主なものについて、その決断に際してのいきさつが詳しく述べられている。
そして最後に、絶えず安定的に収益を上げ続けてきた一人の投資家の思考方法、投資哲学が盛られている。
そのPが使った手段は、誰にでも使えるもの、資産の多少に関係なくすべての投資家が手に入れることができるもの、なのである。
はじめにあれは一九八四年、私が東海岸中部にある証券会社でセールスマン研修を受けていたときのことだ。
私たちは、P社の年次報告書を読むように言われた。
これが、私とW・Pとの出会いである。
他の人も同じだと思うが、まず彼の文章の明快きに感銘を受けたことを記憶している。
一九八0年代、若手の証券プロとしての私について言えば、株式市場や経済の動きに遅れまいと頭をいつもフル回転させて、株の売買に明け暮れる日々を過ごしていた。
ただ、W・Pについての報道に接したり、彼自身が書いたものを読むたびに、彼の理性に満ちた意見は、市場一般の混迷を超えた響きを持つもののように感じられた。
本書を書こうと思い立ったのも、私に平静さを取り戻させてくれたその響きが心に残っていたからであった。
評論家のなかには、Pがたとえ成功者であろうと、彼の投資法は特異であり、広く一般に受け入れられるものではなかろう、と言う人もいる。
しかし、私はそうは思わない。
彼の方法が特異なものという点では同感だが、それこそが彼の成功の源であり、しかも、いったんそれが理解されれば、機関投資家、個人を問わず、採用できるものであるからだ。
Pに成功をもたらしたその投資法を紹介し、投資家がその戦術を取り入れる手助けをすることこそ、本書の目標とするものである。
本書では、まずPが魅力を感じる業種、それにもっと重要なのは、彼が避けて通りたいと考える業種について検討している。
さらに、市況の変動や経済情勢の転換に応じて、PがどのようにP社の株式ポートフォリオを運用してきたか、ということについて述べている。
また最後に、P社が過去に行なった大量投資の記録と、P自身が述べている投資哲学との照合を行なっている。
私は、P本人と彼の友人、同僚のインタビューは考えていなかった。
ただ、原稿の段階で、彼にコピーを送付した。
P杜の年次報告書からの引用が多く、版権を持つPの了解をとる必要があったからだ。
文中、年次報告書からの引用、とくに会長からの報告については、本人から書面による許諾を得ている。
しかし、それは本書の構成へのPの協力を意味するものではなく、また彼が私に対して、すでに公表しているもの以外の秘策、戦術の類いを改めて提供してくれたということでもない。
Pについて記述された部分は、すべて公の行動についてだけで、それもあまり紙数を割いているわけではない。
投資家が必要としていて、しかも彼らにとって価値のあることは、Pの考え方と戦術を、P社が長年の間に行なってきた実際の投資の記録と照らし合わせて、詳しく調べることだと考えたからだ。
W・Pの投資法は簡明である。
コンピュータのプログラムを勉強する必要はないし、分厚い投資銀行マニュアルとも無縁だ。
企業の一O%を買い占める財力と、一OO株しか買えない資力との区別もなく、あらゆる投資家に成功への助力を与えるものである。
ただ、それはあくまでも自力で道を切り開こうとする者への助力である。
成功したければ、相当程度は自分自身で考えを巡らす必要がある。
常に何らかの確認、裏付けなどを必要とする者、とくに相場の動きの裏付けがほしい、という者にとっては、Pの投資法の価値は低減するだろう。
一方、自らの思考力を働かせて、比較的簡単なこの方法を用いて、自ら決する勇気を持つならば、成功の確率は大いに高まるだろう。
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